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立湧(たちわき/たてわき) 

立湧模様の特徴と魅力

立湧(たちわき、たてわき)模様は有識文様の一つで、水蒸気が流れるように上方向に沸き立ち登る姿を曲線で描かれていた模様です。
波のように曲がった2本の曲線によってつくられている幾何学模様で、直線を使わず曲線のみで構成されているため、見た人に柔らかい印象を与えられます。

モチーフに関しては、水蒸気ではなく陽炎や雲気が立ち上る様子を曲線で表現した模様だという説もあります。
どれも縦に美しい曲線が描かれており、「立ち湧く」姿を表現しているという共通点があります。

立湧模様の由来・モデル

立湧文様は、もともとは中国が唐の時代に使われていた文様が日本へと伝来し、そこから和風化されたものだと考えられます。
日本においては平安時代から公家によって活用されており、階級によって身に着ける文様が異なります。
その中でも立湧文様は、格式高い文様に分類されています。

ちなみに立湧文様は、公家の装束に用いられていただけでなく、正倉院梨に宝物として納められています。
吉祥文様の一つとして縁起がとても良い文様だと考えられている点も、立湧文様の大きな特徴です。

立湧文様は、平安時代から現在に至るまで、時代のニーズに合わせながら少しずつ形を変えてきました。
江戸時代においては袖織物や江戸小紋などとして人気が高く、着物の織布としてだけでなく、光沢のある糸で織って帯生地としても活用されていました。
現在でも帯の地紋として使われることが多く、縁起が良いという点から花嫁衣裳の白無垢の掛下帯などにも使われています。

着物以外の場所でも、立湧模様は日本の伝統的な文様として、さまざまアイテムに活用されています。
これまで長い歴史の中で培ってきた日本文化と、日本人が持つ美意識やトレンドなどに合わせてデザインを少しずつ変えながらさまざまな模様へアレンジされています。
本来は水蒸気が立ち上る様子を描いた模様ですが、そこに雲を配置して雲立湧となったり、菊をアレンジして菊立湧模様となるなど、自然のモチーフと立湧が融合して新しいデザインとなるケースは少なくありません。
下から上へ上る曲線が途中で途切れている「破れ立湧」や、水蒸気ではなくて植物のつるや茎が上に登る様子を描いた藤立湧や竹立湧などもあり、幅広いアレンジがされています。

和風のモチーフとして幅広い利用シーン

立湧文様は、現在では和風な雰囲気を持つデザインとして織物以外にも革製品にも幅広く活用されています。
お財布やバッグなどの皮革製品にも立湧模様をアレンジしたデザインが使われていたり、モチーフのパーツごとに色や雰囲気を変えながら和風の小物に仕上がっているアイテムもたくさんあります。