菱(ひし)
菱文様の特徴と魅力
伝統文様の一つである菱(ひし)文様は、直線的な幾何学模様が特徴です。
直線のみで構成されている点や、四辺の長さが等しい菱形を整然と並べている点から、とても男性的な印象を与える和風柄と言えます。
菱模様は、横長のひし形を並べたものが基本形です。
横長ではなく縦長にして並べたものは「立菱」と呼ばれており、菱型を整然と並べたものは「繁菱」と呼ぶなど、アレンジごとに異なる柄名がつけられています。
菱の間にスペースを持たせたものは「遠菱」と呼ばれ、マトリョーシカのように大小さまざまな菱が重なってデザインを形成しているものは入れ子菱と呼ぶなど、基本形をアレンジした様々な菱柄はたくさんあります。
これらの菱柄が時代の流れとともにさらに進化したため、現在では菱柄をモチーフにした柄には数千の種類があるほどです。
全てに柄名がつけられているわけではないものの、菱柄をアレンジした柄であることは一目瞭然です。
菱の由来は?何をモデルにしている?
菱文様は、中国から伝来した文様ではなく日本を起源とする和柄です。
古くは縄文時代の頃から既に庶民にとっては人気があり、縄文土器などにも刻まれています。
その後、日本の文化や歴史と共に菱文様も発展しました。
食器に施す模様だけでなく、衣類に施される和柄となったり、伝統工芸として美しくバリエーション豊かになりました。
菱文様は幾何学的なデザインですが、植物の茎をモデルとした植物文様です。
中でも松皮菱文様はよく知られていて、菱を縦に3つ並べたような形をしているのが特徴です。
また、菱模様の上に菊の花や花弁をちりばめで高級感やデザイン性を高めるなど、菱をベースにして作られている和柄には多種多様なものがあります。
菱文様の利用シーンについて
菱文様は、比較的アレンジしやすい和柄です。
ベースが縦横斜め方向へ延びる直線がひし形を形成しており、ひし形の内側に花のモチーフを施したり、直線部分を植物の蔓や茎に見立てて曲線的な要素を取り込むなどアレンジの可能性は多くあります。
また、菱文様の中にさらに小さなひし形を作る「割り菱」などもあり、着物柄として多く用いられています。
菱文様は、遠くから見ると菱の柄であることが明確ですが、近づくと細かいデザインや柄が見えてきて、息を呑むほどの圧倒的な美しさを堪能できるという共通点があります。
細かい模様が多く施されている菱文様は、現在でも着物の柄や帯の柄などに多く用いられており、凝った文様や細かい柄などは、製造に手間がかかるため高級品として扱われています。
和柄の小物やアクセサリーにも、菱柄はよく登場します。
男性的な雰囲気があるものの、女性向けの小物でも菱柄に曲線を組み合わせることで柔らかさを演出したアイテムなどもたくさんあります。