毘沙門亀甲(びしゃもんきっこう)
亀甲文をアレンジした「毘沙門亀甲」
亀甲模様というと、六角形が亀の甲羅のように縦横に連続してつながっている柄のことです。
長生きの象徴である亀、そして六角形が途切れることなく続くことから、長寿・繁栄を表す模様として人々に愛されてきました。
毘沙門亀甲は、この亀甲模様をアレンジしたやや複雑な形をした模様です。
亀甲模様のパーツである六角形を、3つ重ねて一つのパーツとしました。
これを三盛亀甲(みつもりきっこう)といいます。
この三盛亀甲を縦横に連ねた模様が、毘沙門亀甲、または毘沙門亀甲つなぎ文と呼ばれるものです。
毘沙門とは毘沙門天のことで、仏教の武神として知られいます。
仏教の教えを守り広めるために戦う神様として、武具を身につけ手には宝棒という武器を握り、足下にはその武器で倒した邪気を踏みしめている姿が一般的です。
この毘沙門天が武具として身に付けている鎖鎧が三盛亀甲を連ねた形をしていることから、毘沙門亀甲と呼ばれるようになりました。
六角形が規則正しく並ぶ亀甲模様は、かっちりとした印象があります。
これに比べて、遠目には三角形にも見える三盛亀甲が三角形の頂点を上下に互い違いに重ねられている毘沙門亀甲は、動きがあり流動的で柔らかでありながら、華やかなイメージが特徴といえるでしょう。
毘沙門亀甲のさまざまなバリエーション
毘沙門亀甲のパーツである三盛亀甲は、3つ組み合わせた六角形の輪郭だけを残し内部の線は取り去ったもので、テトラポットを平面図にしたような形をしています。
内部を空洞にしたものが基本ですが、内部に模様をあしらった柄もよくみかけます。
例えば、三盛亀甲の中に六角形の亀甲模様をぎっしりと並べたもの、花を散らしたものなど、さまざまなバリエーションがみられます。
それぞれのデザインによって、ガラリと印象が変わるのも毘沙門亀甲の魅力の一つといってよいでしょう。
六角形の亀甲模様もいいけれど、ちょっとアレンジしてワンランク上のおしゃれを楽しみたい、そんな着物上級生のニーズも満たす複雑な柄ですが、亀甲模様と同様に長寿や繁栄を表しますし、何よりも毘沙門様に守られているような安心感が得られます。
毘沙門天は仏教では勇猛な武神ですが、日本では七福神の神様としても知られています。
毘沙門天はもともとは、インドのヒンズー教の神様であるヴァイシュラヴァナが、仏教に取り入れられて仏教界の神様として信仰されてきました。
このヴァイシュラヴァナは財宝の神様であることから、七福神の毘沙門天は財と福を招くありがたい神様とされるようになりました。
亀甲のめでたさと毘沙門天の力強さと豊かさ、そして招福の力が込められている毘沙門亀甲。
着物や帯に使われることが多いのですが、陶器など他の美術工芸品にも用いられています。