歌舞伎
400年以上前に始まった歌舞伎
歌舞伎は日本の伝統芸能であることは知っているけれど、その舞台はみたことがない、歌舞伎について詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか。
歌舞伎は今からおよそ400年以上前の江戸時代の初期に、出雲の阿国(おくに)という女性が踊った「ややこ踊り」がルーツといわれています。
「歌舞伎」の「かぶき」とは「傾く(かぶく)」とい意味があり、世間の常識なんてどこ吹く風、派手な衣装を着たり勝手な振る舞いをしたりする人たちのことを「傾奇者(かぶきもの)」と呼んでいました。
出雲の阿国はこの傾奇者のスタイルを取り入れ、派手な男装で踊り人気を博しました。
このためややこ踊りは「かぶき踊り」と呼ばれるようになり、踊りだけでなく芝居の要素が加わった総合芸術へと発展していき、江戸の人たちを熱狂させる娯楽となったのです。
元々は女性の踊りから始まった歌舞伎ですが、その後は少年による若衆歌舞伎が誕生します。
しかし女性や少年を客が取り合うなどのトラブルが多発したため、幕府はこれを禁じました。
その後に誕生したのが、青年男性のみが登場する野郎歌舞伎です。
これが現在の歌舞伎へとつながっており、男性のみが出演し、女性の役も男性が演ずるという歌舞伎の独特のスタイルを確立しました。
臨場感あふれる芝居を生み出す舞台装置
人々を熱狂させる工夫は舞台にも行かされており、その一つが舞台装置です。
素早く舞台転換をする「回り舞台」、舞台の下から俳優がせり上がりながら登場する「セリ」、客席の背後から登場して、演技をしながら舞台へと移動するための「花道」など、当時は最先端の斬新な工夫が各所にほどこされています。
バリエーション豊かな歌舞伎の演目
歌舞伎は400年以上にわたる歴史があり、その時代に合わせた演目を芝居によって表現してきました。
当時起こった事件を題材にしたものもあれば、能の演目を歌舞伎に仕立てたものなど、そのバリエーションは多彩ですし、数え切れないほどの演目が残されています。
それらを大きく分けると、歴史をテーマにした「時代物」、現代を舞台にした「世話物」、能の演目を題材にした「松羽目物」、踊りだけの演目や踊りに重点を置いた芝居の「所作事」の4つに分れます。
歴史をテーマにした「時代物」であっても、実はそのときの世相を題材にした演目は数多くあります。
当時は幕府の目が厳しく、政道批判となるような芝居は許されませんでした。
ですから、舞台を室町時代など古い時代に設定して演じられることもあったのです。
たとえば江戸・元禄年間に起こった赤穂事件を題材にした「仮名手本忠臣蔵」は、江戸時代に起こった事件であるにもかかわらず舞台を室町時代に設定されています。
どの演目も長い年月をかけて受け継がれてきました。
見得を切るなど舞台映えをする派手な動作から、登場人物の心のひだを表現する繊細な所作まで、目を離せない演技の数々。
登場人物の性格までも表現する、美麗な衣装など、みどころが満載です。