日本の行事・記念日の歴史や過ごし方をまとめました!

瑞雲(ずいうん)

吉兆を告げる「瑞雲」模様

瑞雲とは、これから何か良いことが起こるとき、その前触れとして現れるとてもおめでたい雲です。
虹のように五色に輝き、通常の白い雲とは異なる美しい色彩が特徴です。
めったに見られない雲であることから、良いことが起こる兆しとして昔から珍重されてきました。

雲は気象を観測するときに欠かせないものであり、雨や雪を降らせる根本ともいえる重要な現象です。
このため古代の人々は雲を神聖なものとして崇め、雲には神様や霊が宿っていると信じられてきました。

中国でも雲から万物が生まれるという思想があり、「雲気」と呼んで天候や物事の吉凶を占う根拠としてきました。
そしてその中でも、吉を示す雲、すなわち「これから良いことが起こる」ことを知らせるおめでたい雲のことを「瑞雲」といって珍重してきたのです。

特に中国では、神仙思想を背景に瑞雲が広く知られています。
不老不死の仙人が住むといわれる伝説の山・蓬莱にはめでたい雲である瑞雲が山をとりかこむ聖地として人々の憧れでした。
日本にもこの考え方はすでに飛鳥時代には伝わっており、正倉院に納められている御物の中にも瑞雲が描かれた壺がみられるなど、古くから神仙思想と共に瑞雲が受け入れられていたようです。

不老長寿にも通じる「瑞雲」

不老不死の象徴でもあり、これから良いことが起こる前兆でもある瑞雲をデザインした柄のことを、「瑞雲文」といいます。
また瑞雲文と同じような意味合いをもち、よく似た模様に「霊芝雲」とも呼ばれる文様もあります。
霊芝とは食べると不老不死が得られる、神聖なキノコのことです。
霊芝は傘の縁がくるんと丸まっていて、まるで雲のような形にみえることから、丸みを帯びた雲の文様を「霊芝雲」と呼んでいます。

瑞雲も霊芝雲も、同じように縁起の良い模様です。
丸が重なり合って雲を象る軽やかなフォルムは、見ているだけで気持ちが浮き立つようなほのぼのとした明るさを感じさせてくれます。
雲にのった仙人になった気分を味わえる、素敵な模様といえるのではないでしょうか。

瑞雲文のように縁起の良い模様のことを吉祥柄と呼び、幸せを呼ぶ文様として愛されてきました。
特に身を包む着物や帯は、着る人の身を守り幸せをもたらすようにとの願いから吉祥模様を用いることが多く、その中でも瑞雲は季節を問わず用いることができるので重宝するデザインとして現代でもよく用いられる模様です。

古くから親しまれてきた柄ですが、時代を感じさせない洗練されたデザインも特徴です。
無地や小紋の着物に、瑞雲をあしらった帯を合わせると、すっきりとモダンな印象になります。
着物の柄として楽しむ場合、瑞雲に亀甲や花、鶴などのおめでたい柄と組み合わせるのも華やかで素敵です。