矢がすり
矢につけられている矢がすり模様
かつては明治大正時代の女学生の着物の柄の定番として親しまれていたのが矢がすり模様です。
古くから弓矢の矢に取り付けられていた矢羽根の部分がこの柄の由来となっており、矢を真っ直ぐ狙ったところに飛ばすためにつけられた部分として知られています。
矢羽根があることで固定もしやすくなることから、戦国時代など弓を大量に消費する時代においてはほとんどの矢に矢羽根がつけられていたと言えるでしょう。
現在も五月人形などが持つ弓には矢羽根がついた矢があることがほとんどです。
矢羽根をつけた矢は通常の矢に比べると狙いが定まりやすく力強く飛んでいくことから、魔を払う縁起物として親しまれていました。
そんな矢羽根のご利益にあやかるべく誕生したのが矢がすり模様なのです。
江戸時代においては結婚する女性に矢がすり模様の着物を贈る風習がありましたが、こちらは射た矢が戻ってこないことにちなんで、出戻りする事が無いように願いを込めて贈られたとされています。
時代と共に意味合いが変わった矢がすり模様
元々は結婚する女性が身につける柄として親しまれていた矢がすり模様ですが、時代と共にその考えが一変。
江戸時代の大奥で働く奥女中が制服として身につけたこともあり、未婚の女性が身につけるイメージが世に定着していったのです。
また明治大正期の女学生、いわゆる未婚女性が身につける柄として親しまれ、海老茶色の袴と合わせたスタイルが定番のスタイルとして広まったのも有名でしょう。
矢がすり模様の元々の意味合いから時代と共に印象が一変した模様は実は少なくありません。
模様はいずれも現代にまで受け継がれている伝統的な模様ではありますが、元々の由来からかけ離れて現在に伝わる模様もあると考えると、和柄をより一層楽しめるでしょう。
着物や帯の柄として定番中の定番
一昔前の女学生のように矢がすり模様を一面にデザインした着物や浴衣なども多く、現在では着物の帯や鼻緒の柄など、小物類に使われていることも少なくありません。
とても華やかな色合いの和柄ですので和物に利用するイメージが強く、小さいサイズでも存在感があることから、和柄ネイルで矢がすり模様を指定する方もいます。
和風なデザインをファッションに取り入れたい方にもぴったりの模様です。
また矢がすり模様はカラーの工夫がしやすいのも特徴で、モノトーンや朱色と白、抹茶と白の組み合わせのように、片方に白を組み合わせたカラーが主流です。
白を組み合わせずともデザインはしやすいのですが、白を入れる事でより矢がすり模様の美しさを際立たせることができるでしょう。
矢がすり模様の元々の矢羽根にちなんであえて白を取り入れている方も少なくありません。